「職業人」についての企業からの設問に答える、という問題は、「志望理由がよくない」という問題をどう解決するかを考えると見えてきます。
■志望動機は、ラブレターである
前回、エントリーシートの志望理由がよく書けている学生は少ない、というお話をしました。
その原因として挙げたのは2点。
①企業研究の不足。「使えるキーワードを拾えれば」という浅い考え方で企業研究をしている。
②考察の不足。 企業研究で得た情報を自分なりに理解できているのか、また、それがどのような意味をもつのかを考えていない。
つまり、「企業のことを知らないから、ちゃんとした志望理由が書けないのです」ということを言いたいわけです。
たとえば、魅力的な異性にラブレターを書くことを考えてみましょう。
いまの時代、どれだけの人がラブレターという手段を使っているか、よくわからないのですが、
「手紙を送りつけ、一方的に自分の気持ちを伝える」という点において、ラブレターとエントリーシートはよく似ています。そして、一度送ってしまったら、その気持ちが通じるかどうかは、相手にゆだねられるという点も似ています。
受け入れられるラブレターを書くためにはどうしたらいいでしょうか?
やっぱり、どうしたら相手の気持ちをゆさぶることができるかを考えるはずです。
そこで「丸写し」はないはず。
「志望理由」も、まったく同じです。
■「志望理由第1回戦で敗退」とは
エントリーシートの志望理由に必要な「キモ」とは?
私はこういうふうに考えています。
「企業のよさを見つけること、好きになること」。
当然、最初にやるべきことは、「企業を知ること」です。
ですから、情報を集めることになりますが、
採用ページや企業説明会などで知ることのできる情報とは、この第一段階に過ぎないということを知っておく必要があるでしょう。
単に企業理念をそのまま書いたエントリーシートは、第一歩しか記していないのです。
ラブレターとしても失格。受からなくて当然です。
■企業のよさを見つける企業研究
「企業のよさを見つけること、好きになること」のために、何が必要なのでしょうか。
必要なのは、「相手を理解すること」。これが、企業研究です。
・企業が公表している、企業理念、特長などを理解する。(これが第一段階)
・集めたデータを自分の知識として整理する。
①データを整理する
もともと知っていることや、業界研究などで得た情報と関連づける。
統計的なデータもここで整理しておくといいでしょう。
企業活動がどんな意義を持っているか、
業界でシェアはどのくらいか、何位なのか。
売上や利益は伸びているのか、落ち込んでいるのか。
②特徴のある製品、自慢の技術にどんなものがあるか。
製造業なら製品、サービス業ならその内容がどんな特徴があるかを分析します。
・現段階で、その企業が社会にどんな影響を及ぼしているのかを考える。
「社会にとって、その企業がなくてはならない理由」を考えてみます。
・それらが、どんな考え方によっているのかを考える。
経営理念や、現経営者の方針、研究開発の方向性などが挙げられます。
■企業研究で「好きになった」ことを、志望理由として着地させる
あなたなりの企業研究で、その企業の姿が見えてきました。
その、どんなところが好きなのか、あるいは、どんなところに自分が貢献できるかを考える、それが志望理由となります。
志望理由を書くときには、以上のような量と質の「情報収集」「考察」が必要なのです。
逆に、このぐらいの考察を行って書いた志望理由ならば、問題なく通るはずです。
最後に注意をひとつ。
企業研究とは、自分で情報収集をして、自分の頭で考えることです。
個人の情報収集には偏りがどうしても出てきますし、また思考にもいままでの経験の制約や、やはり考えの偏りが反映されてしまいます。
ですから、企業から見て、正しいとは言えない考察もたくさん出てきます。
しかし、これはマイナスにはなりません。
「自分の頭で考える」。このことさえ伝われば、積極的に評価されることが多いと思います。
面接などの段階で指摘してもらえることもあるでしょう。
間違いを恐れない。これが、実は「通るエントリーシート」を作るコツです。
次回は、いよいよ「職業人とは」という問題を考えます。
方法は、今回の「志望理由」の考え方とほぼ同じです。
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