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2013年2月

2013年2月25日 (月)

「職業人とはなにかパニック」が教えるもの

 先々週から、「職業人とは何か」という検索語でのアクセスが急増し、このブログでかつてなかったアクセス数を記録しました。しかし、先週前半でぱたりとアクセスがなくなりました。そのことについて、twitterに書きましたので転載します。正直のところ、がっかりしています。

 なお、私のtwitterアカウントは@pointscaleです。


無料で就活生の相談に乗るようになって4年目だが、とてもがっかりしている。先々週の末から、私のブログに「職業人とは」という検索でのアクセスが急増。通常の5倍にふくれ上がり、のべ1万近くのアクセスとなったが、ぱたりとそれがなくなった。

理由は、大手鉄道会社のエントリーシートの設問になったから。つまり、設問になったからみんな検索してきたけれど、締切が来たから用済みになったのだ。そこで、みんな考えることをやめてしまった。こういうわけだ。

アクセス解析によると、ほとんどの就活生が検索のページから出ずに閲覧を終えている。自分で考える方法を書いた過去ログへのリンクを張ったが、アクセスはとても少ない。つまり、就活生たちは「あなたにとって職業人とはなにか」という質問に対する「正解」を速く検索して、丸写ししたい、あるいはしたのだ。

「職業人とはなにか」。経験を積んだわれわれだって、試行錯誤の中から「こうかな?」と探り出すようなテーマだ。自分の考えた職業人の定義と要件を書けばいいのだが、就活生は経験がないのだから、現段階の自分の経験や企業研究から、「こうかな?」と考えた根拠やプロセスを提示すればよいし、それが問われる。

「職業人とはなにか」は、同じような自己PRや志望動機があふれかえるのに食傷した企業が、「自分で考えたことで勝負せよ」と突きつけた切り札である。写せばばれるし、通過しても面接で馬脚を現す。つまり、企業は「大学は、思考力を養うところ」という原点に戻った設問を出すことで、学生の力を試そうとしているのだ。

しかし、「成果をアピールする」思考しかできない就活生たちはパニックに陥った。いつもの「○○を実現しました」のアピールができず、どうしていいかわからなくなったからだ。私のブログへアクセスしたのべ1万の就活生のうち、ほとんどが討ち死にすることになったろう。思慮が浅すぎる。

学生たちと接して痛感するのは、彼らは日常、とても努力しているのに、それを糧にして考えを進める力が圧倒的に弱いということだ。それには、本質の理解が不可欠であり、その経験がないとノウハウは身につかない。大学で「考えるための自分なりの方法をつかむ」教育が行われていないのだ。

就活問題の一番大きな原因は、結局のところ、「就活生の力不足」である。私はそう思わざるを得ない。この圧倒的な現実の前には、企業の採用数の問題も、学生の人気企業への集中も、ほとんど意味をなさない。このていたらくは、一義的には大学の責任だと思う。しかし、それだけではない。

就活生や大学をここまで追い込んだのは、「こうすれば、こうなる」と信じ、最短距離で実現する完成した人材を欲した、企業や社会の問題でもある。「こうすれば、こうなる」というノウハウを得るには、仮説と試行錯誤の検証、というプロセスを体験することが不可欠だが、それが置き去りにされている。

学校でも企業でも、これが教えられなくなっている。大学で身につけるべきは、自己PRの書き方でもなく、ましてや「就活におちこぼれない」ための効率的な授業の受け方でもない。自分で問題を立て、我慢して考え、「こうかな?」という仮説をひねり出して検証する力だ。これさえあれば、就活は楽々こなせるはずなのだ。

2013年2月18日 (月)

〈臨時更新〉「どんな職業人になるか」を、どう考えるか④「職業人」テーマの過去記事

臨時に更新します。

 先週から、このブログのアクセスが急増しており、ここ数日は倍々ゲームのような
増え方になっています。

 みなさん、「職業人」関連のワードでこのブログにたどり着かれています。

 これから、〈「どんな職業人になるか」を、どう考えるか〉について更新していく
予定ですが、
 この言葉を検索してたどり着いているからには、エントリーシートに書かねばならず、
ということは、締切もあるのだろうな、と思うわけです。更新を待っていられない人も
おられるでしょう。

■検索で見落とされている「職業人」の記事
 実は、就活にあたって「どんな職業人になるかを考えるべき」というのは、もともと
私が重要だと考えていたこと、一昨年の2011年に、すでに記事としてまとめていました。
 しかし、Niftyが提供するアクセス解析を見ると、最近、アクセス自体はすごく多い
のに、参考になるはずの記事、いま、みなさんが見たいだろう記事にアクセスが
ほとんどないのです。

 これが、まさに〈Googleだのみの落とし穴〉です。
 Googleに検索語を入れただけでは、調べたことにならないのです。

 就活における検索の光と影、というテーマも興味深いのですが、
 ともかく、時間がない人のために、過去記事のリンクをご紹介します。
 平凡社新書『1点差で勝ち抜く就活術』には、さらに詳しく、わかりやすく
「どんな職業人となるか」を考えるための自己分析の方法についてご紹介していますので、
こちらもどうぞ。

 今後、さらに新しい、「職業人とは」に絞り込んだ新規記事を更新していきます。

■「どんな職業人になりたいか」過去記事へのリンク
「通るエントリーシート」を書く① 恐ろしい「ES同一病」

「通るエントリーシート」を書く② 必勝エントリーシートの構造とは その①

「通るエントリーシート」を書く③ 必勝エントリーシートの構造とは その②

「通るエントリーシート」を書く④ 自己分析はシンプルに、深く。

「通るエントリーシート」を書く⑤ 自己分析の深め方

「通るエントリーシート」を書く⑥ 「弱み」が、実は強みになる

通るエントリーシートを書く⑦ 体験をどこまで書くか

2013年2月17日 (日)

「どんな職業人になるかを、どう考えるか」③「職業人とは」と「志望理由(動機)」をちゃんと分ける

 前回まで、志望理由(志望動機)とは何か、志望動機を組み立ててエントリーシートに表現するには、どんな要素が必要かということを説明してきました。
「職業人とはなにか」がテーマなのに、志望理由の話をえんえんとしてきたのは、多くの学生の中で、両者がきちんと分けられず、一緒になってしまっている。それが失敗の原因だと感じているからです。
 これから、核心である「職業人とは」という話に入っていきますが、〈企業からの見方〉と〈学生から見た、学生が自分で積み上げる見方〉に分けてお話しします。

■大きな〔志望動機〕の中に、「職業人」と「個別の志望理由(志望動機)」が入る
「どんな職業人になりたいですか?」と、「あなたはなぜ当社で働きたいのですか?」という質問。
 両者はまったく違う質問です。まず、それがひとつ。
 しかし、両者は密接な関係にあり、どのように関係していることを押さえておくことが必要です。

 「職業人とは?」
 仕事というものに向き合う態度・思想
 1.仕事に向き合うに当たっての心構え
 2.仕事の経験を積み重ねて理解した、「職業というものへの知」

 「志望理由(志望動機)とは?」
 その企業に、なぜ入りたいと思うのか
 1.企業のどのような点をよいところと感じているのか。
 2.自分のもつ「職業人とは何か?」〔職業観〕が、その企業にどのように合うのか。
 3.以上を前提として、自分はどんな活躍や貢献がその企業でできるのか。

 つまり、「職業人とは?」+「志望理由(志望動機)とは?」で、
 はじめて〈その企業になぜ就職したいか〉という、「大きな志望動機」が完成するのです。
 「職業人とはなにか」という考えは「もともとあなたの中にあるもの」。それを見せてほしい、というのが「どんな職業人になるか」という質問で企業が見たいところです。

 エントリーシートにしても面接にしても、これらの要素をひとつひとつ示して組み上げていって「大きな志望動機」を完成させる、あるいは逆に、まず「大きな志望動機」を語り、そしてひとつひとつの要素に分解していく。これらができていれば、「エントリーシートの書き方」の考え方としては手応えが得られるのではないかと思います。
 企業は、このあたりがきちんと分けて考えられ、整理されているかどうかを見たいのです。

■問いに合わせ、全体へのつながりを意識して書く
 エントリーシートや面接で表現する際に、上に上げたブロックは、すべて一緒に示さなければならないわけではありません。企業の設問でその一部分だけを聞いてくる場合は、その欄に書けばいいわけです。
 たとえば、「あなたはどんな職業人になりたいですか」という質問も、それに当たります。
 コツとしては、質問には端的に答えるべきです。しかし、他の企業への志望理由や自己PRなどで「私はこういうことをしてきました!」そして、「この企業に入りたい!」というアピールにつながるように書くことです。企業の担当者に、上に示したような構造を見せることができれば成功です。

■次は、いよいよ、あなたの「職業人とは何か」を探っていきます!
 お待たせしました。次回、「あなたの中から、〔職業人とは何か〕をどうやって導き出すか」について考えていきましょう。「職業人とはなにか」を考えるうえで、一番基本の考察となります。

 ただいま発売中の平凡社新書『1点差で勝ち抜く就活術』では、第4章で自己分析のやり方と、「職業人」についての考え方の導き出し方について、実は、すでに具体的に説明してあります。また、第8章では、みなさんの先輩にあたる、元銀行員の柏井美優さんのインタビューから、実際に職業に就いて働くことから導き出された「職業人とは何か」について考えています。ご参考になると思います。

2013年2月15日 (金)

「どんな職業人になるか」を、どう考えるか②まず、「よい志望理由とは何か」を考えよう

「職業人」についての企業からの設問に答える、という問題は、「志望理由がよくない」という問題をどう解決するかを考えると見えてきます。

■志望動機は、ラブレターである
 前回、エントリーシートの志望理由がよく書けている学生は少ない、というお話をしました。
 その原因として挙げたのは2点。

 ①企業研究の不足。「使えるキーワードを拾えれば」という浅い考え方で企業研究をしている。
 ②考察の不足。 企業研究で得た情報を自分なりに理解できているのか、また、それがどのような意味をもつのかを考えていない。

 つまり、「企業のことを知らないから、ちゃんとした志望理由が書けないのです」ということを言いたいわけです。

 たとえば、魅力的な異性にラブレターを書くことを考えてみましょう。
 いまの時代、どれだけの人がラブレターという手段を使っているか、よくわからないのですが、
「手紙を送りつけ、一方的に自分の気持ちを伝える」という点において、ラブレターとエントリーシートはよく似ています。そして、一度送ってしまったら、その気持ちが通じるかどうかは、相手にゆだねられるという点も似ています。

 受け入れられるラブレターを書くためにはどうしたらいいでしょうか?
 やっぱり、どうしたら相手の気持ちをゆさぶることができるかを考えるはずです。
 そこで「丸写し」はないはず。
「志望理由」も、まったく同じです。

■「志望理由第1回戦で敗退」とは
 エントリーシートの志望理由に必要な「キモ」とは?
 私はこういうふうに考えています。

「企業のよさを見つけること、好きになること」

 当然、最初にやるべきことは、「企業を知ること」です。
 ですから、情報を集めることになりますが、
 採用ページや企業説明会などで知ることのできる情報とは、この第一段階に過ぎないということを知っておく必要があるでしょう。
 単に企業理念をそのまま書いたエントリーシートは、第一歩しか記していないのです。
 ラブレターとしても失格。受からなくて当然です。

■企業のよさを見つける企業研究
「企業のよさを見つけること、好きになること」のために、何が必要なのでしょうか。
 必要なのは、「相手を理解すること」。これが、企業研究です。

 ・企業が公表している、企業理念、特長などを理解する。(これが第一段階)
 ・集めたデータを自分の知識として整理する。
   ①データを整理する
   もともと知っていることや、業界研究などで得た情報と関連づける。
   統計的なデータもここで整理しておくといいでしょう。
    企業活動がどんな意義を持っているか、
    業界でシェアはどのくらいか、何位なのか。
    売上や利益は伸びているのか、落ち込んでいるのか。

   ②特徴のある製品、自慢の技術にどんなものがあるか。
   製造業なら製品、サービス業ならその内容がどんな特徴があるかを分析します。

  ・現段階で、その企業が社会にどんな影響を及ぼしているのかを考える。
    「社会にとって、その企業がなくてはならない理由」を考えてみます。

  ・それらが、どんな考え方によっているのかを考える。
    経営理念や、現経営者の方針、研究開発の方向性などが挙げられます。
   
■企業研究で「好きになった」ことを、志望理由として着地させる
 あなたなりの企業研究で、その企業の姿が見えてきました。
 その、どんなところが好きなのか、あるいは、どんなところに自分が貢献できるかを考える、それが志望理由となります。

 志望理由を書くときには、以上のような量と質の「情報収集」「考察」が必要なのです。
 逆に、このぐらいの考察を行って書いた志望理由ならば、問題なく通るはずです。

 最後に注意をひとつ。
 企業研究とは、自分で情報収集をして、自分の頭で考えることです。
 個人の情報収集には偏りがどうしても出てきますし、また思考にもいままでの経験の制約や、やはり考えの偏りが反映されてしまいます。
 ですから、企業から見て、正しいとは言えない考察もたくさん出てきます。

 しかし、これはマイナスにはなりません。
「自分の頭で考える」。このことさえ伝われば、積極的に評価されることが多いと思います。
 面接などの段階で指摘してもらえることもあるでしょう。
 間違いを恐れない。これが、実は「通るエントリーシート」を作るコツです。

 次回は、いよいよ「職業人とは」という問題を考えます。
 方法は、今回の「志望理由」の考え方とほぼ同じです。

2013年2月13日 (水)

「どんな職業人になりたいか」を、どう考えるか①

■志望動機の質がよくない、という傾向
 まず、志望動機の話からはじめることにします。
「職業人」に関する質問が出てくるのはなぜなのか、と考えてみたのですが、それは志望動機の問題を抜きにしては語れないと思うからです。

『1点差で勝ち抜く就活術』にも書きましたが、就活生のエントリーシートを見ていて、一番弱いと感じるのは、何といっても志望動機です。

 いちばん多いパターンがこれです。会社案内や企業セミナーで「これが当社の特色です」と提示されたものをそのまま写して、

「○○という技術で工事を完成させる御社なら」
「○○という企業理念をもつ御社なら」

 という志望動機を書く人が非常に多いのです。
 なにがいけないのか、わかりますか。

 これらがダメなのは、就活生本人が「それについて理解しているか」「それについてどう思っているか」という情報が全く入っていないからです。
 自分でこう書いてみて「これではダメじゃないかな」と思った学生は、ちょっと考えてこう書きます。

「○○という企業理念をもつ御社なら、私の力が生かせると思い、志望いたしました」

 これでもダメ。
 なぜでしょう。「企業理念」と「私の力」に何の関連も見いだすことができないからです。
「うちの会社を志望する理由」が果たして何なのか、企業は見いだすことができません。
 それでは、「通るエントリーシート」にはならないのです。

■志望動機が貧しいから、「職業人」の質問ができた?
 では、どうしてこんな志望動機が量産されてしまうのでしょうか。
 理由はふたつです。

 ①企業研究の不足。「使えるキーワードを拾えれば」という浅い考え方で企業研究をしている。
 ②考察の不足。企業研究で得た情報を自分なりに理解できているのか、また、それがどのような意味をもつのかを考えていない。

 こういう志望動機があまりにもあふれてしまっているため、企業は、もうひとつ質問を増やすことにしたのだと思います。

 それが、「職業人」に関する質問だと私は考えています。

 続きます。

2013年2月12日 (火)

ちょっと急いで注意喚起:「どんな職業人になりたいか」が、多くの企業で問われています。

■検索語に表れている「異変」
 このブログはちょっと変わっていまして、アクセス解析をとりますと、いつも来てくださる読者の方よりも、検索で来られる方が圧倒的に多い特徴があります。

 で、今の時期はエントリーシートを書く時期たけなわですので、エントリーシートの質問をそのまま検索語にして来る人が非常に多いのです。

 つまり、「解答例」を求めているのですな。
 それはよくないですよ(笑)。

 エントリーシートとは、自分が今までやってきたことを、企業にマッチングさせるための「思考の質と量」を見せるものです。そこにコピペしてしまう不自然は、一発で見破られます。

 ただ、そういう検索をされるのは私にとってはメリットもあって、
 その年の、企業の「出題傾向」のようなものが読み取れるんですね。

■キーワードは「職業人」
 ここ1週間ぐらいのことですが、「職業人」「どんな職業人になりたいか」という検索語でこのブログを訪れる方が非常に増えてきており、時には「強み」「弱み」など、エントリーシートで問われる一般的なワードを超えています。

 今年は、「職業人」ということがらについての考えをエントリーシートで問う企業が増えている、と考えて間違いないでしょう。

 それでは、「職業人」とは何でしょうか?
 言葉のとおり、「はたらくひと」ということですね。
 では、なぜ、わざわざ「職業人とは何だと思う?」「職業人として、どんなことに心がける?」と質問しているのでしょうか?

■企業の志望動機と「職業人とは?」は分けて考えること
 いまはまだ、詳しい分析をお示しすることはできないのですが、取り急ぎみなさんにアドバイスしたいのは、「職業人に必要なことと志望動機とは分けて書くべき」ということです。
「職業人とは?」という質問は、あなたが仕事をする際の心構え、ということになります。各企業に対する志望動機の手前、志望動機の前提をなす考え方、それを問うているといえます。ですから、志望動機と役割を分けて書くことが必要なのです。

 いまなぜ、「職業人とは何か」が問われているのでしょうか。
 それははっきりとはわかりませんが、志望動機の質が劣化していると企業に思われている可能性があるのではないでしょうか。そこで、「仕事とは何か」「なぜ、あなたはわが社を志望するか」と質問を分け、考え方の筋道が立っているか、仕事をする、という自覚が備わっているかを見たいと思っているのではないかと推測します。

 取り急ぎ、みなさんの注意を喚起します。
「こんな質問です」「こんなふうに考えてみましたが……」など、コメントやメールでお寄せいただければありがたいと思います。

2013年2月 6日 (水)

平凡社新書『1点差で勝ち抜く就活術』のフォローブログです!

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しばらくトップに表示させておくご案内です。更新は次の記事からです。

このブログは、『1点差で勝ち抜く就活術』(高瀬文人・坂田二郎著)の原形であり、また、2012年10月刊行後は、最新情報やさらに掘り下げてのフォローの場として機能しております。
ぜひお読みいただき、ご質問やご意見をコメントやメールでお寄せください。お答えいたします。
目次については、こちらをご参照ください。

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ご要望があれば、セミナーや個別の相談(学生は無料です)などにも応じております。

2013年2月 5日 (火)

自己分析②「事実」を積み上げる以外に、自己分析の方法はない

■道具に頼りすぎると、うまくいかない
ある大手人材派遣会社が、社会人の転職のための講習で使っているテキストを見る機会がありました。
そこには、自己分析の第一段階として、たくさんの「言葉」が印刷してありました。
「自分にあてはまると思うものに丸をつけなさい」
意欲的、独創的、思いやりがある、仕事を確実に進める……ページいっぱいに、仕事への態度に関するポジティブな言葉が印刷されていました。丸をつけた言葉群が、自分の性格であり、仕事に対する態度だというのです。

「だめだな」と思いました。

似たようなことをやったことがある人もいるかもしれません。
就職情報企業などが大学で多数の学生を集めて行うセミナーなどでも、同様の手法で自己分析をやったり、アンケートを統計処理するなどして、「あなたはこういう性格です」という分析なども行われています。

ここで安心してしまう人が案外多いのですが、
それだけでは、役に立たないのです。

面接で、アンケート式分析にもとづいて「私はこういう人間です」とアピールしたとしましょう。
企業の面接担当者は、こう聞くでしょう。
「では、そのことが表れている、具体的なエピソードを話してください」
あるいは、
「○○の場合、あなたはどうしますか」
どう答えるでしょうか?

■「事実」からの自己分析こそが王道
私は、「自己分析は事実から導き出すべき」という考え方で、就活生諸君に一貫してアドバイスしてきました。
まず、具体的なエピソードを出してもらい、成果やそれを生み出す過程、そして最初の着眼など、あくまで事実から本人の性格を導き出すのです。
あくまで、根拠は事実に置き、「事実がこうだから、私はこういう性格だ」というアプローチをとります。

正直のところ、効率がよいとは思えません。また、就活生諸君は、いままで考えたこともなかった「あなたのその行動はどうしてなの?」という私の質問攻めに遭って、目を白黒させています。面倒です。

しかし、このような方法をとることには2つの大きなメリットがあります。
ひとつは、分析が終わった時、自己の性格とエピソードが結びついた形で整理されるため、エントリーシートや面接の質問に的確に答えられるということ、
もうひとつは、複数の事実や、そこに表れる性格を組み立てると、それまで考えていなかったような自分のよさが見つかったり、自分の想像以上に大きな意義があり、あるいはレベルの高い考え方や性格であることがわかる、というものです。

平らな地面の上に散らばった、出来合いの言葉を当てはめているだけでは、自己分析はうまくいきません。
言葉を高く積み上げる。イメージで言うと、そういう感じです。
根拠なしに言葉を積み上げることはできません。「根拠=事実」です。

「自分には、まだ気づいていない潜在能力がある」
私は、そういう考え方は自己分析においては有害だと考えています。
あなたがこれまでの人生の中で経験してきたこと、取り組んできたこと。
その中に、すでにあなたという人間の価値が表れています。
それを取り出すのです。大変ではありますが、成果は十分に上がるはずです。

2013年2月 1日 (金)

あなたの自己PRが「通らない」わけをお教えしましょう。

■よいところがない就活生はいないが、自分のよさを知っている就活生もまた少ない
前回にも触れましたが、私が今までこのブログや平凡社新書『1点差で勝ち抜く就活術』で書いてきたことについての誤解が一定数ある、というお話です。
「私が今まで会ってきた就活生たちに、まったくアピールすべき点もない人はいなかった」
という記述に対して、
「それは努力をしてきた人たちで、自分はそうしてこなかった。だからダメだ」
とすぐネガティブにとらえる人たちがいるわけです。

もったいない話です。
ただし、正確に(あるいは親切に)説明すると、
「いまの学生に、就活でアピールすべき自分のよさがない人はいない」
のですが、同時に、
「自分のよさを、最初から的確に企業に対して示せる人も、またとても少ない」
という事実があります。
これらの人たちは、やはり「エントリーシートが通らない」という挫折感を味わい、頭から自分のことを否定する人たちと同様に「自分の実績が足りないからだ」と自己評価を下げてしまうのです。

そうすると、就活がうまくいかない「負のスパイラル」に入ってしまいます。

■自分をアピールできないふたつの理由
なぜ、自分のよさを伝えられないのか。理由はふたつです。

①自己分析がうまくできていない。
②自己分析の結果を、エントリーシートでうまく表現できていない。

②の問題は、主に志望動機にかかわるもので、これもまた非常に大切かつ就活生の理解が浅いものなので、次に取り上げたいと思いますが、まず①の問題を考えてみましょう。

■自己分析にすぐ「飽き」てはいけない
私が就活生のみなさんに対して言いたいのは、
「自己分析を終わらせるのが早すぎる」
ということです。

おそらく、「どのように自己分析をしていいかわからない」という問題があって、それがみなさんに意識化されておらず、「悩み」にすらなっていないのではないかと私は考えています。

①「自分は何をしてきたのか」
②「それについて、どのように考えたのか」
③「どのように努力したのか」
④「どのような成果を得たのか」
⑤「何を学んだか」
⑥「この体験を通じて、自分はどのような成長をとげたのか」

端的に言って、自己分析はこれがワンセットです。ここまでやって、初めて
「私は●●な人間です」
とアピールできるのです。
しかし、たいていの就活生の自己分析は①だけか、あるいは①と④で終わっています。
アピールは⑥の部分となるわけですが、それは①〜⑤が揃って、初めてきちんとできるものなのです。
①、④、⑥だけでは、やはりうまくいきません。

これを理解していない就活生があまりにも多いと感じています。
逆にいえば、理解さえしてしまえば、これだけでうまくいくはずなのです。

私が会ってきたほとんどの就活生は、①、あるいは①と④だけで自己分析を「やった気」になっていました。

これでは、自己PRを展開しようとしても、すぐ行き詰まってしまいます。
苦し紛れに「盛る」ことを始めてしまうのは、これが理由なのではないでしょうか。

続きます。

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