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November 23, 2009

骨太な装幀――菊地信義氏の魔法(その3)

この本の装幀で衝撃的なのは、表4・ひょうよん、と呼ばれている「本の後ろ側」です。

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本のカバーの折り返しには、著者略歴が入っていることが多く、本書でもそうなっています。ところが菊地氏の非凡なところは、カバーの折り返しを超えて、本の表面にも略歴を続けたことです。ちょうど表紙をくるむ折り返しの部分を境にして、折り返し側には「それまでの人生」、折り返してからは「それからの人生」が記される仕掛けになっています。

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装幀家が装幀のイメージを作るときには、編集者から伝えられた本の内容によるのが普通ですが、原稿や校正刷りについては読む人と読まない人に分かれます。菊地氏は圧倒的少数である、必ずゲラを読む、つまり本の内容を読むことで有名な装幀家ですが、この「折り返しの略歴」の発想は、内容を読み込んでいないと絶対に生まれないものです。これにはうならされました。

そして帯をつけると、本の表側と同様、略歴と帯に入っている言葉が対になって対照されるという仕掛けになっています。折り返しを超えた部分の著者の人生が、帯の言葉で断罪されるのです。

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菊地氏ならではの装幀術は、本を開いたところにも見ることができます。

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本を開くと、表紙の裏の「見返し」には、赤い紙が貼ってあります。少し黒の混じった、血の色のような赤。その次に来る著者名、書名が入る「大扉」も同じ赤い紙が使われています。

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菊地氏によれば、カバーの白とこの赤で「日の丸」を象徴しているのだとのこと。たしかに本書の内容は自民党政権中期〜末期の自民党の主導権争いや原発・地方分権政策について詳しく書かれており、著者が地方自治体の首長として、霞が関の官僚組織に立ち向かい、やがて斃れるというストーリーなので、この白と赤のコントラストが、たいへん鮮やかにこの本を象徴していることがわかります。

装幀とは、単なるパッケージではなく、本の内容を「かたち」にして表現する、という営みなのです。

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