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October 05, 2005

第22号:村上ファンド×阪神タイガース、チームは誰のものか?——横浜FCの「種類株式」に学べるか?

 阪神電鉄の株を買い進め、筆頭株主となった「村上ファンド」は、阪神電鉄経営陣に対し、阪神タイガースを上場するよう提案していたことがわかった。(05.10.05)
…………
 スポーツと投資というのは、相容れないテーマなのだろうか。
 プロスポーツの運営会社が、ファン向けに種類株式を発行している例が、実はもうある。カズ加入、そしてシドニーFCへの期限付き移籍でちょっと話題の、サッカーJ2リーグ横浜FC。元横浜フリューゲルスが、佐藤工業と全日空スポーツの資金引き揚げで存続ができなくなった際、横浜・F・マリノスと分かれてできたチームである。

 横浜FCの運営会社は、6人のサポーターが株を持つかたちで発足した。会員企業向けに普通株式を発行していたが、横浜フリューゲルスの存続運動でサポーターが法的に有効な対案を提示できなかった反省から、2002年の増資の際に、商法平成一三年度改正で可能になった種類株式(利益や利息の配当などの財産の分配や議決権について内容の異なる株式)を発行した。
 この種類株式は、ファンクラブ「横浜FCクラブメンバー」会員を対象に、利益配当請求権、残余財産分配請求権、営業譲渡、合併、解散について議決権を有することとし、たとえば、クラブが消滅するような事態に、サポーターが株主として、法的に意思表示できるようになった。種類株式は額面1万円、2000株が発行された。

 すなわち、サポーターが、「機能限定」の株式を、「小分けにして」持つことで、チームの、経営上の問題をもふくめてのありようをどうするかとの決定の一端を、担うことができるという話である。横浜フリューゲルス消滅の反省に立ち、経営とチームを一体のものとしてみる「クラブ」、しかも横浜FCの場合は「市民クラブ」に近いクラブの運営方法は、株式会社のガバナンス手法とけっこうマッチングするのものなのだ。なかなか面白い試みであると思う。
 
 ライブドアのプロ野球参入問題のときに、堀江社長が「株式を公開する」と言明していたが、その意味について踏み込んでいたメディアはなかったはずだ。われわれは、まだこういう思考方法にピンときていないのだ。

 ひるがえって阪神タイガースである。村上ファンドが狙っているのは、あくまでも阪神タイガースのブランド力による収益性の最大化であるようで、最初は余裕の対応をしていた阪神経営陣も、それを感じているのであろう、感情的な反応が目立ってきたようだ。「企業価値向上vs.企業の宣伝媒体」の価値観の対立という、昨年のプロ野球再編劇と同じ図式になってしまって残念である。

 来年4月施行の新会社法をはじめ、ここのところの商法改正は、規制緩和を目的にしてやってきた。「原則禁止」から、「原則容認、事後規制」に変わったわけである。これらの一方の側面だけを見ると、ハゲタカファンドが法律と市場のしくみをテコに大儲けするのを法が後押ししているようにしか見えない。しかし、法の別の面を見ると、横浜FCのような試みができる。会社をどのような形にして生かしていくのか、という選択肢が増えるのである。

 プロ野球の「企業の宣伝媒体」としての終焉、サッカーやホッケークラブチームの運営難という厳しい情勢の下、「チームとはどのように経営されるべきか」「株式会社という形態は、それにどのような役割を果たすことができるのか」、そして、スポーツへの投資は何のためにするか、投資家はどんな見返りを得ればよいのか、考えを広げ知恵を集めていく起爆剤になりうるのに、と思うのだが。
 「株主価値の向上」は、本来それに矛盾しない考え方なのではないか? そんな状況に一石を投じてくれるのならば、村上ファンドは、まず広島東洋カープあたりから始めたらよかったのでは……
(05.10.06に一部加筆しました)

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