カメラ

2012年10月 3日 (水)

リコーGXR「数え方教室」

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(東京駅八重洲口。リコーGXR Mount A12+フォクトレンダーSWH15mmF4.5)

このブログに使っているのは、いつも持ち歩いているリコーGXRというカメラだ。 小さなカメラ1台で、ほぼ何でも撮れる。何にでも使える。 もっとも、何をもって1台というのか、非常に迷うカメラだ。 きょうは、そういう倒錯した話である。

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大きめのコンパクトカメラという風情。GXRは、持ち運びが大変楽なカメラだ。 しかし、左にごろん、としているレンズのついた箱は何なのか。 これは「カメラユニット」なのである。

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(A12 50mm/F2.5MACRO)

10月1日に公開された、東京駅丸の内北口のドーム内部。まるで大伽藍のようだ。

GXRは、そのレンズ固有のチューニングを施した撮像素子を固定した「ユニット」単位になっていて、それをシャッターボタンやダイヤル、液晶モニタやストロボのついた「本体」に差し込んで右の状態にすることで写真が撮れる。右は「GR LENS A12 28mm/F2.5」と称する、左は「GR LENS A12 50mm/F2.5MACRO」という、それぞれ広角と標準の単焦点レンズを固定したカメラユニットである。いわゆるミラーレスカメラや一眼レフカメラは1つの撮像素子に対してレンズを交換するので、レンズごとに撮像素子が用意されるGXRはぜいたくだと言えるし、経済的でないとも言える。

カメラユニット2つ。だから、考えようによっては、この写真には2台のカメラが写っていることになる。

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カメラユニットを外した「本体」は、こんな板っきれである。これだけを「カメラ」と呼ぶにはやはり抵抗がある(私は「持ち手」と呼んでいる)が、カメラユニットと本体を合わせなければ、普通のカメラの機能は果たせない。板にはレールが取り付けてあり、カメラユニットとかみ合わせてスライドすることで、パチンと本体にはめ込まれる。感触はなかなかよく、剛性感もしっかりとしている。

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(A12 50mm/F2.5MACRO)

「レンズに最適な撮像素子のチューニング」を謳い、あえて1200万画素に画素数を抑えただけあって、写りは大きな一眼レフと巨大なレンズの組み合わせにひけをとらず、実に素晴らしい。ネギのシャキシャキ感と、ねっとりした煮込みの油の膜を見てほしい。もっとも、この森下「鳥長」の鶏煮込みも素晴らしいのだが。

これらのカメラユニットの不満点のひとつは、単焦点2種類、ズーム3種類ラインナップされているのに含まれない画角のレンズを使えないということであった。私は、28ミリよりももっと広角のレンズを使いたかったのである。

すると、リコーはすごいものを出してきた。「Mount A12」である。

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これは撮像素子とライカが使っているMマウントをセットにして、ライカMマウントのレンズ交換ができるようにしたユニットである。ライカ遣いや、フィルム時代のレンズをたくさん持っている人は狂喜乱舞した。

28mmよりもっと広角の画角がほしかった私はまず、コシナが出しているフォクトレンダーSHW15mmF4.5という、35mm版でいえばかなりの超広角レンズをつけた。

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撮像素子はAPS-Cという35mmフィルム(デジカメでは「フルサイズ」)よりも小さなサイズのため、22.5ミリ相当の広角レンズとなる。

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コントラストが高く、パキパキに写るレンズだ。こんなパースペクティブの効いた、独特の絵が撮れる。残念ながら片ボケ傾向があり、メーカー保障で点検・修理してもらうべきか悩みながら使っていたら、道路に落としてしまった。いずれにせよ自腹を切らなければならなくなった。

デジカメ、特にミラーレス時代になって、様々なメーカーのレンズをアダプターを介して使う遊びが流行っている。これは、中国のKIPONというメーカーが出している、ニコンの一眼レフ用マウントをライカMマウントに変換するアダプターだ。要するに、機械加工で精度を出した輪っぱでレンズとユニットをつなぐのだ。

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KIPONは3月に横浜で行われたカメラと写真のイベント「CP+」に初出展を果たした。

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(A12 28mm/F2.5)

CEOはこんなお兄さんだ。彼はアメリカで異なるメーカーのレンズをつけて楽しむ写真ファンが多いのを見て、日本やヨーロッパでも流行ると踏み、さまざまなアダプターを開発した。その狙いは大当たりした。

Mount A12には思わぬ副産物があった。既存のカメラユニットよりもタイムラグが大幅に短いのだ。

GXRは動きモノの撮影が苦手であった。たとえば、50mm/F2.5MACROを使って、タイムラグを少しでも短くするためにフォーカスをマニュアルにしても、このような残念な写真しか撮れない。

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ところがMマウントユニットだと、機構がシンプルなのでかなり速い。いわゆるミラーレスカメラでは、液晶に像を映すタイムラグはどうしてもあり、直接レンズで結んだ像を見られる光学ファインダーのついた一眼レフにはかなわない(光の速さより速いファインダーは存在しない)が、Mマウントユニットを使うとかなりうまくいく。

この例ではレンズが50mmよりも長い望遠レンズを使っており、見かけの速度が遅いので簡単には比べられないが、その点を差し引いても、走ってくるものをファインダーいっぱいに収めた作画がきちんとできるようになった。

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(ニッコール135mmF2.8)

もっと面白いのは、明るいレンズをつけたときだと気づいた。シグマ24mmF1.8。

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APS-Cでは36mm相当になり、ニコンD300につけて結婚式写真を撮っていたが、その予定が一巡して、持て余していたのである。GXRにつけるとレンズのお化けのようだが、これが面白い。

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開放値が1.8と明るいので夜でもシャッタースピードが稼げ、夜景の撮れる範囲が拡がった。絞り開放では紙のように薄いピントとなり、それ以外がきれいにぼけるのだ。さらに、手動のピントが合っていることを、液晶画面に銀色のエッジを表示して知らせる「ピーキング」が、実にはっきり見え、ピントが合わせやすい。結局、手放せないレンズとなった。

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明るいレンズは収差やゴースト、フレアなどの問題をかかえる。この写真は、それを逆手に取って、照明の光をふんわりと見せたもの。シャープに結像しているタワーとのコントラストが面白い。

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「TOKYO STATION VISION」も、このレンズの開放で撮った。

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上映時に、隣の親子をとらえたスナップ。明るいレンズならでは。

お父さんの背中で見た、光とCG技術のページェント。大人になってこの赤レンガ駅舎を足早に歩く君は、この晩のことを思い出すだろうか?

翌日は、正面から撮ろうと思った。

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行幸通りに設けられた観覧スペースから。私の前には間違いなく1000人以上の人がいる。

この撮影に使ったのは、ニッコール80-200mmF2.8のズームレンズ。GXRにつけると、こうなる。

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レンズのお化け以外の何物でもないと言わざるを得ない。しかし一眼レフのミラーが上下する振動がないので、夜間の手持ち撮影には有利と見たのだ。

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そんなわけで、1台でさまざまな用途に使えるリコーGXR。工夫を考えるのも楽しい、手放せない「相棒」である。しかし、こうやって並べてみると、はたして何台あるのかわからない。28mmと50mmはカメラユニットだが、MOUNT A12はカメラユニットと言わないし。本体とカメラユニットをばらしたら、どう数えるのか?

いま、GXRシステムは安く手に入る。私も、長い修理に出しているときに、あまり安いので、中古で板っきれの「本体」を1枚増やしてしまった。これが、実に便利なのであるが、2台に増えたというのか。

ああ、謎は深まるばかりである。

まあ、私は、これ全部で1台しかないと思っているが。

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