東武線にJR北海道のSLが走る「大人の事情」
東武鬼怒川線下今市ー鬼怒川温泉間にJR北海道(新ひだか町所有)のC11207号機が走ることになった。
「蒸気機関車(SL)の復活を目指します」(PDF)
なぜなのか?その答えは以下の報告書の中にある。
「JR北海道再生のための提言書」(PDF)
度重なる事故やインシデントで、鉄道事業法の事業改善命令、JR会社法の監督命令に服し、改善策を打ち出し実行しなければならない重大な局面に追い込まれたJR北海道。報告書25ページには「イベント列車から手を引く」ことが明記されている。それによって当面浮いてしまう蒸気機関車の活用策と言えよう。少し先のことである再来年の復活が、留萌線廃止の発表と同じタイミングでリリースされたのも、JR北海道側の理由だろう。
つまり、東武線を走る蒸気機関車は「大人の事情」で実現するのである。歓楽温泉街の鬼怒川温泉の凋落、原発事故の影響で入り込み客が激減した日光の観光てこ入れ策は求められているが、「SL待望論」はどこにもなかった。東武側のリリースを読んでも、鬼怒川線自体が「下野軌道」という軽便鉄道の蒸気機関車で開業した歴史や、その支線(矢板線・廃止)で昭和34年まで蒸気機関車が走っていた、当地に地に足のついた歴史が空白で消化不良だ。もともとの必然性もなく、かつ準備の時間もなかったのだと思われる。
とはいえ、蒸気機関車保存運転の先駆者大井川鐵道が新しい経営体制のもと生き残りに取り組むように、鉄道経営は難しさを増す。単なる集客アイテムというとらえ方を超えて、地域を越えた鉄道同士の協力が実れば、わが国鉄道全体の希望となるし、その実現が大きな課題と言えるだろう。
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